表向きは完璧な王太子、けれど素顔は不器用で、独り占めしたいほどに彼女を想っている——。
“理想の王子様”という幻想がゆっくり剥がれ落ち、代わりに立ちあがるのは、ただ一人の女性に向けられた真っ直ぐすぎる愛。
この作品は、そんな仮面の下に隠された執愛がじわりと解けていくTLマンガです。
大人の恋愛を求める読者にも刺さる「静かで甘い緊張感」が魅力。
あらすじ(ネタバレ最小)
幼い頃から本で読んだ“品行方正な王子様”に憧れてきたクリスティナは、まさに理想そのものと噂される王太子フェリクスと婚約することに。
ただし——彼には「もう一つの顔」があった。
完璧さの裏に隠していたのは、口の悪さやズボラさ、そしてクリスティナへの秘めたる想い。
彼の素顔を偶然知ってしまったことで婚約が決まったものの、互いに本音を言えない二人の関係はいつも揺れ続けている。
そんな中、フェリクスが他の令嬢に誘われた“お茶会事件”をきっかけに、クリスティナの心は大きく波立ち——。
世界観と舞台設定
舞台は異世界の王宮と王族の学園。
公的な場と私的な空間で、フェリクスの“二面性”がくっきり分かれるため、恋愛ドラマの対比がとても分かりやすい。
身分差と格式が混在する世界観のため、恋愛がこじれる理由にも説得力がある。
見どころ
この作品の見どころは、なんといっても「完璧な王子の仮面がひび割れる瞬間」と、そこに触れてしまったクリスティナの揺れ。
大人の恋愛TLらしい心理の緊張感が丁寧に描かれています。
理想の王子様ではない素顔に触れる、胸のざわめき
クリスティナが偶然知ってしまうフェリクスの素の姿。
完璧な王子らしからぬ口調や態度に驚き、転倒してしまうシーンは“理想と現実”のギャップに心が揺れ、読者としても同じ地点に立たせてくれる描写。
他令嬢のお茶会事件——すれ違いの痛み
品行方正キャラで断りきれず、お茶会に向かうフェリクス。
腕を組まれる姿を目撃したクリスティナの心の声がとてもリアル。
大げさな修羅場ではなく、心の奥でひそかにひびが入るような痛みが丁寧に描かれる。
“避けられた”王子の素顔が露わになる瞬間
クリスティナのよそよそしい態度に耐えきれず、周囲の目も気にせず素を出すフェリクス。
「なぜ避ける?」と真剣な眼差しで迫るシーンは、本作のターニングポイント。
王宮の自室で交わされる二人の本音には、TLらしい大人の甘さと緊張感が溢れている。
読後の感想・考察
フェリクスは“完璧な王子”という役割に縛られていて、
クリスティナは“理想の王子様”という幻想を抱いていた。
二人のズレは、本来なら出会わなかったはずの場所で交わってしまった歪みのようなもの。
でも、そのズレが解ける瞬間こそ、この作品の甘さのピークです。
特に、「相手の素顔を知り、それでも好きでいる」
というテーマは、大人の恋愛に通じる深みがあります。
TLマンガでありながら、
心理の積み重ね→限界→突破→甘さ
という流れに説得力があり、読後はとても満たされた気持ちに。
まとめ
『品行方正な殿下は、私の前でだけ過剰な愛を隠しきれない』は、
“仮面の王子”と“理想を抱いた令嬢”が、すれ違いの果てに本当の恋人になるまでの物語。
学園が主な舞台ではあるものの、TLマンガらしい大人の雰囲気をまといつつ、じれ甘・独占欲・両片想いの美味しいところがしっかり詰まっています。
1話完結ですぐに読めるので、「今日は甘いロマンスを補給したい」という30代女性にもおすすめできる一冊です。


