第8巻は、シリーズでも屈指の緊張感をはらんだ“戦争編”の本格始動巻。
堅牢を誇った要塞都市スクデットが、未知の兵器「火薬」によって陥落。
これまで防衛と内政で優位を築いてきた側が、真正面から崩されるという衝撃展開が描かれます。
しかし――その一方で、ヴァンは村でバーベキュー大会や誕生日会を開催。
戦争の重さと、相変わらずのマイペース領主ぶり。
シリアスとコメディが同居する、まさに“ハイブリッド巻”でした。
8巻の収録話と内容紹介
8巻は37話~41話を収録。
第37話
物語は少し時間を遡る。
フェルティオ侯爵家第一都市から、ヴァンの父・ジャルパはスクデットへ向かう。
迫り来るイェリネッタ王国軍を迎え撃つためだ。
しかし彼が目にしたのは、すでに破壊された堅牢な城壁。
攻略の鍵となったのは「火薬」。
この世界では存在すら知られていない未知の兵器だった。
爆発は炎の魔術と見間違えるほどだが、威力も性質もまるで違う。
現在軸では、国王の命で派遣されたヴァンもスクデットに到着。
彼は陥落の瞬間を目撃する立場となる。
ヴァンはまず市民の避難を優先。
一方ジャルパは、爆弾という未知の攻撃に苦戦を強いられる。
第38話
ジャルパは撤退を決断。
しかしイェリネッタ軍を率いる第三王子ライゾンは勝利を確信し、
「追撃は戦の華」と逃げる騎士や市民への追撃を命じる。
その最中、突如ワイバーンが墜落。
混乱の中、次々とワイバーンが撃墜される。
正体はヴァンが用意した“機械人形”。それを操っていたのはアルテだった。
結果として敵軍の注意を一身に引きつけることに成功し、ジャルパたちの撤退は事実上、ヴァンの助力によって成し遂げられる。
第39話
アルテの操る人形は、ヴァンお手製のウッドブロック製。
鎧はミスリル製という本気仕様。
敵を次々と撃破しながらも、ヴァンはアルテに「辛かったらやめていい」と声をかける。
戦争は人の命を奪う行為だ。
それを理解した上で、それでもアルテは覚悟を示す。
精神的な成長がはっきり描かれた回だった。
頃合いを見てヴァンたちも撤退し、村へ帰還。
第40話
スクデットはイェリネッタに奪われた。
しかし市民と騎士団は救われ、全員無事帰還という結果に。
ジャルパは騎士団再編を進め、奪還へ動き出す。
そこへ国王が登場。
籠城で敗れ、野戦で敗れ、撤退。
恥辱にまみれた報告をするジャルパは、そこで初めてヴァンの助力がなければ壊滅していたと知らされる。
かつて無能と評し追放した息子が、今や国王のお気に入り。
これ以上ない“ざまぁ”構図が完成する。
長男ムルシアは素直に受け入れ、国王の提案でヴァンの町へ赴任することが決定する。
第41話
一方ヴァンは、村でバーベキュー大会や誕生日会を開催。
戦争の最中とは思えないお気楽ぶりだが、これは圧倒的な生産技術に裏打ちされた余裕でもある。
男爵として戦争参加の義務はある。
だが前線には出たくない(面倒だから)。
そこで彼が選んだのは――新兵器の開発・納品という形での参戦。
物語のラストでは、スクデット近隣の町でヴァンとジャルパが遭遇。
登場人物の動き・印象
戦争を前にしても基本スタンスは変わらない。
「面倒だから別の方法で参加する」という発想は実に彼らしい。
敗北と撤退。
誇りある騎士としては屈辱的な結果。
さらに、追放した息子が国王の寵愛を受けている現実。今後の態度が気になる存在だ。
戦場で覚悟を示す姿が印象的。
これまで守られる側だった彼女が、自ら命を懸ける側へと成長している。
8巻の見どころ・印象に残った展開
第8巻は“戦争の重み”と“ヴァンのマイペース”が強烈に対比された巻。
特に印象的だったポイントを挙げたい。
スクデット陥落という転換点
過去に幾度も防衛してきたスクデット要塞が陥落。
やはり一番の原因は火薬の存在。
イェリネッタ王国が自国で開発したというよりは第三者から提供を受けていそう。
スクーデリアVSイェリネッタでは終わらなそうな、裏がありそうで印象的。
ヴァンのマイペース戦略
国が奪還戦を準備する中でのバーベキュー大会。
そして「新兵器を納品して参加扱いにできないか」という発想。
普通なら不謹慎にも見えるが、彼の場合は“できてしまう”のが面白い。
お気楽領主の真骨頂が光る場面で見どころ。
父と息子、再び交差する運命
追放した息子が国王に重用されている現実。
ジャルパがどう向き合うのか。
最後の対面シーンは静かな緊張に満ちていた。
次巻への最大の引きとして印象的。
8巻全体のテーマ・考察
スクデットは過去に何度も侵攻を退けてきた。
それが火薬によって崩れた。
問題は、この火薬兵器をイェリネッタ王国がどこから入手したのかという点。
読んだ印象では、自国開発というより第三者の関与を疑いたくなる。
もし背後勢力がいるなら、これは単なる二国間戦争ではない。
国家を超えた思惑が動いている可能性もある。
物語は確実にスケールアップしている。
まとめ
第8巻は、
・スクデット陥落
・火薬という新要素
・父子の再接近
・ヴァンの新兵器構想
と、大きな転換点が詰まった一冊。
それでいてバーベキューや誕生日会を挟むあたり、お気楽ぶりも健在。
シリアスとコメディが絶妙に融合した巻だった。

