第6巻は、領地が「場所」から「社会」へと変わり始めた一冊だ。
冒険者の町、ダンジョン拠点、そして新たに迎え入れた150人の元奴隷たち。
ヴァンのやっていることは相変わらずチートだが、この巻で特に印象的なのは、“力”よりも“人の扱い方”にこそ彼の領主としての資質が表れている点だろう。
笑える展開と、胸を打つエピソードが静かに同居する、非常に味わい深い巻である。
6巻の収録話と内容紹介
6巻は第27話~第31話を収録。
※本項では、各話の見どころが分かる程度に内容を紹介しています。
物語の細かな演出や感情の動きは、ぜひ原作でお楽しみください。
第27話
村から1キロ離れた場所に、冒険者向けの新しい町の建設が進む中、クサラとフラミリアが冒険者たちを連れて帰還する。
仮設の柵をあっさり作ってしまうヴァンの姿に冒険者たちは度肝を抜かれるが、彼を侮辱する言葉にディーが激昂。
その一件以降、冒険者たちは一気に大人しくなり、治安改善の兆しが見え始める。
同時に、オルトたちが危険な立地にあるダンジョンの存在を報告。
拠点作りを懇願されるヴァンは「運んでもらって昼寝とデザート付きなら」と無理難題を出すが、冒険者側は即了承。
こうしてダンジョン付近拠点建設が決定する。
第28話
神輿に担がれ、冒険者たちとともにダンジョンへ向かうヴァン一行。
危険な崖渡りを見かねたヴァンは橋を即席で建設し、安全性を一気に向上させる。
ダンジョン到着後、入口横に4階建ての豪華拠点を半日足らずで完成させ、さらにモンスター流出防止の門まで設置。
相変わらずの規格外ぶりだが、門限に間に合わず、エスパーダにこってり叱られるオチで締まる。
第29話
ランゴが王都から帰還。
フォレストドラゴンとアーマードリザードの素材は白金貨180枚で売却され、日本円換算で約180億円という破格の成果を上げる。
さらに王都で購入してきた連射式機械弓をヴァンに渡し、ヴァンはこれをもとにバリスタなどの兵器開発を構想。
そして最大の出来事として、150人もの奴隷を連れて帰ってきたことが明かされる。
ヴァンは彼らを奴隷として扱わず、住民として迎え入れ、一人ひとり面接を行い役割を与える。
明日が見えなかった彼らに、“生きる目的”が生まれた瞬間だった。
第30話
新住民たちへの役割分担が本格化。
元吟遊詩人や踊り子は酒場兼劇場要員に、農業経験者は農地へ、魔術師や元冒険者は騎士団へ配属される。
小柄で前線に立てない者たちは、ヴァン改良のチート仕様・連射式機械弓部隊として育成されることに。
また、アルテが自身の「傀儡の魔術」適性を告白。
忌避される魔術により自信を持てなかった彼女だが、ヴァンはその可能性を見抜き、等身大の人形兵を作り上げる。
初めて「自分にも役割がある」と実感し、アルテは心からの笑顔を見せる。
第31話
アルテの傀儡人形が村人たちの前で披露される。
暗殺の魔術という先入観を覆す、美しい舞に大歓声が上がり、アルテ自身も魔術と自分を肯定できるようになる。
感動的な空気のまま終わるかと思いきや、ラストでは国王が登場。
「こんなにも心が高鳴るのは久々だ」と語り、ヴァンの領地へ向かう姿が描かれ、次巻への強烈な引きを残して幕を閉じる。
登場人物の動き・印象
生産チートだけでなく、人材配置と価値付けのうまさが際立つ。
「人を活かす領主」としての完成度が一段階上がった印象。
傀儡の魔術を通じて自己肯定感を獲得。
この巻でもっとも精神的成長を遂げたキャラクターに思う。
一喝で治安を改善する存在感。戦力以上に“抑止力”として有能。
モブ扱いされず、「役割を持つ人間」として描かれている点が印象的。
6巻の見どころ・印象に残った展開
第6巻の見どころは派手な建築やチート能力もそうだが、「人が居場所を得る瞬間」が丁寧に描かれている点にある。
ダンジョン前拠点建設という、規格外すぎるインフラ整備
危険地帯にあるダンジョンに対し、半日足らずで4階建て拠点+門まで作ってしまうヴァン。
もはや拠点というより、ダンジョン管理施設の完成度である。
本人は昼寝とデザート条件という軽さだが、やっていることは国家事業級なのが面白い。
奴隷を「人」として迎え入れる、ヴァンの領主としての覚悟
150名もの奴隷を購入しながら、誰一人として使い捨てにしない姿勢が描かれる。
一人一人と面接し、役割を与え、「まずは生きる基盤を作ろう」と導くヴァン。困った人は見過ごせない性格が発揮される。
この巻は、防衛だけでなく領主としての思想が最も強く表れた巻でもある。
アルテと傀儡魔術――否定されてきた力が“誇り”に変わる瞬間
忌避されてきた傀儡魔術を、ヴァンは即座に「戦略的価値」として評価する。
そして作られたドレス姿の人形は、アルテ自身の居場所を象徴する存在となった。
村人の前で舞う人形と歓声は、アルテが過去を乗り越えた決定的な一歩として心に残る。
国王の登場予告が示す、物語フェーズの転換
感動的なアルテの描写の直後に差し込まれる国王のカット。
「久々に心が高鳴る」という一言が、この領地が国家レベルで注目され始めたことを示す。
ここから先は、村作りではなく政治と権力の物語へ進んでいく予感を強く残す締めだった。
6巻全体のテーマ・考察
この巻のテーマは明確に「居場所」だろう。
冒険者、元奴隷、アルテ――立場も過去も違う人々が、ヴァンの領地で役割を与えられ、自分の価値を見出していく。
ヴァン自身はお気楽を望みながら、結果的に最も“人の人生に責任を持つ存在”になっているのが皮肉であり、この作品らしさでもある。
まとめ
第6巻は派手さよりも深みが光る一冊だった。
領地運営ものとしても、人間ドラマとしても完成度が高い。
そしてラストの国王登場により、次巻ではいよいよ「国家」との関係が本格化しそうだ。
お気楽では済まなくなりつつあるヴァンの領主生活から、ますます目が離せない。



