本作第1巻では、主人公ムコーダが「ネットスーパー」という一見役に立たなさそうなスキルを武器に、異世界を旅するきっかけと仲間を得るまでが描かれます。
激しい戦闘や大きな陰謀よりも、旅先で作る食事と、それを美味しそうに頬張るキャラクターたちの反応が中心。
スローライフ寄りの癒やし系異世界ファンタジーの雰囲気が強く、肩の力を抜いて楽しめる巻です。
1巻の収録話と内容紹介(第1話~第5話)
ムコーダは、異世界への勇者召喚に巻き込まれたものの、持っていたスキルが「ネットスーパー」だったため、王国から追い出されてしまう。
旅路を安全に進めるため、冒険者パーティ「鉄の意志(アイアンウィル)」を護衛として雇い、道中の食事をネットスーパーの食材で振る舞うムコーダ。
その美味しさは人間だけでなく伝説の魔獣フェンリルにまで届き、ムコーダはフェンリル(後のフェル)と従魔契約を結ぶことに。
その後、フェーネン王国に到着し、商人ギルドや冒険者ギルドでの登録、素材買取など、旅を続けるための基盤を整えていく。
登場人物の動き・印象
異世界生活に対し積極的に戦おうとはせず、できる範囲で安全に、慎ましく生きたいタイプ。
しかし「ネットスーパー」を使うときの柔軟な発想力は侮れず、その適応力が魅力。
伝説級の魔獣でありながら、食に弱いギャップが面白い。
圧倒的な強さと頼もしさを提供しつつ、ムコーダとの距離が一気に縮まる存在へ。
ムコーダの人柄と食事を評価しつつ、護衛として短期間ながら重要な役割を果たす。
1巻の見どころ・印象に残った展開
第1巻は、ムコーダが異世界で生きていくための仲間・装備・生活基盤を整えていく“旅のスタート地点”。
なかでも、食事を通じて築かれる関係性が大きな軸になっており、フェルとの出会いは物語全体の方向性を決定づける重要なポイントです
ここでは、特に印象深かったシーンを中心に振り返ります。
伝説のフェンリル、まさかの“生姜焼き”堕ち
伝説の魔獣と恐れられるフェンリルが、ムコーダの生姜焼きを食べた瞬間、態度が一変。
「お主と契約してやろう」と申し出る展開は、本作屈指のコミカル名場面。
威厳ある存在が“美味い飯”に負ける、ギャップの面白さと温かさが詰まっています。
ネットスーパーがもたらす「異世界×現代」のミックス感
塩・胡椒・スパイス・カセットコンロなど、現代の食文化が異世界で“応用”されていく面白さが際立つ巻。
ファンタジー世界で、日本の日常がそのまま影響を与える距離感が、読んでいて心地よく印象的。
フェーネン王国での生活基盤づくり
ギルド登録や素材買取など、旅を続けるための実務的な流れが描かれ、
「この世界で生きていく」基盤を丁寧に作るストーリー運びが魅力。
ハードではなく、生活に根ざした世界構築が優しい。
1巻全体のテーマ・考察
本巻は「異世界生活の取っ掛かり」としての役割が中心。
派手な展開より、人と人(+魔獣)が“食を通じて関係を結んでいく”ことがテーマとして際立っている印象です。
ムコーダが戦わずとも旅が成立するのは、ネットスーパーという「生活スキル」が、剣や魔法とは別の価値を発揮しているから。
異世界であっても、生活は生活。ごはんは大事。
その感覚が作品に温度と優しさを与えています。
まとめ
第1巻は、世界観やキャラの関係性を丁寧に整える“序章”の巻。
ムコーダとフェルのコンビが旅を続ける中で、どんな料理と出会い、どんな人々を巻き込んでいくのかが気になってきます。
次巻以降は、さらに素材・食事の幅が広がり、旅先での出会いや事件も増えていくはず。
「食事が中心の異世界ファンタジー」というジャンルが好きな人には、今巻はまさに良い入口になる一冊です。



