悪役令嬢の怠惰な溜め息 5巻ネタバレ感想|絵画展と第2回剣術大会で加速する王太子失格フラグ

異世界で生きる物語
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第5巻は、派手な断罪劇こそ起きないものの、エセリアの“悪役令嬢完成度”が一段と高まる一冊。
絵画展、そして第2回剣術大会――二つのイベントを通して描かれるのは、感情で動く王太子と、盤面を支配する婚約者の決定的な差だ。

グラディクトはアリステアの評価を上げようと空回りし、エセリアはその裏で国と秩序を守るために静かに布石を打つ。
婚約破棄はまだ起こらない。だが、“起こすための環境整備”は確実に進んでいる。そんな緊張感に満ちた巻だった。

5巻の収録話と内容紹介

5巻は19~23話を収録。

19~21話|絵画展編

音楽祭の余韻が残る学園。話題はエセリアの演奏ばかりで、アリステアの名はほとんど出ない。
その状況に不満を募らせたグラディクトは、まさかの「音楽祭第二弾」を提案。止められた結果、今度は絵画展を強行開催する。

しかしその裏では、
・エドガーの絵を“アリステアとの共作”にする構図
・王家の馬車で修道院へ向かったアリステアの噂
・側付き解任問題の火種

と、危うい要素が山積み。

一方エセリアは、ワーレス工房で新商品「クーレ・ユオン(クレヨン)」を完成させる。
マリーリカがそれを用いて出品した作品は大絶賛。結果、アリステアの評価向上どころか、再び周囲の注目は別方向へ向かう。

さらにエセリアは、悪評を意図的に流させるなど“悪役令嬢ムーブ”を加速させていく。

22~23話|第2回剣術大会編

第2回剣術大会が開催。今回は第二王子アーロンも出場し、場は一層の緊張感に包まれる。

第一王子グラディクトの母ディオーネと、第二王子アーロンの母レナーテ。
二人の側妃による静かな火花が大会を彩る。

2回戦ではイズファイン対アーロンという好カードが実現。
側付き同士の応援合戦で場の空気は険悪になるが、エセリアが機転を利かせ、あえてアーロンへ声援を送ることで空気を一変させる。

そして大会後、グラディクトはついにアリステアを母ディオーネに紹介しようとする。
だがエセリアは平民の功労者を先に紹介し、場の流れを完全に掌握。さらに陛下への報告を理由に側妃たちを退席へ誘導し、紹介作戦は頓挫する。

グラディクトの苛立ちは深まり、エセリアへの敵意はより強固なものとなった。

登場人物の動き・印象

エセリア

完全に“盤面を読む側”へ。
悪評を自ら背負いながら、王家の均衡と世論操作を同時に進行。婚約破棄を急がず、「最適な形」にこだわる姿勢がより鮮明になった。

グラディクト

空回りが加速。
アリステアの評価を上げるための行動が、ことごとく裏目に出る。感情優先の判断が目立ち、政治的視野の狭さが露呈している。

アリステア

善意と無自覚の境界線が揺らぐ。
エドガーの絵を“自分の作品”と言い切る場面は、彼女の自己認識の甘さを象徴している。

イズファイン&サビーネ

剣術大会を通じて関係性が進展。
政略的婚約者というより、信頼関係が見える描写が増えた。

ディオーネ&レナーテ

王太子争いの“母の戦い”。
息子を信じて疑わない両者の火花が、今後の王位継承問題の伏線にも見える。

5巻の見どころ・印象に残った展開

第5巻の見どころは、「イベントを利用した立場の可視化」にある。
華やかな催しの裏で、誰が信用を得て、誰が孤立していくのかが明確になる。

絵画展という“空回りの象徴”

アリステアの評価を上げるために開催されたはずの絵画展。
しかし結果はマリーリカの独壇場。

努力の方向性がずれているグラディクトと、静かに実績を積むエセリア陣営の対比が鮮明だったので印象的。

クーレ・ユオン誕生

エセリアの“娯楽の顔をした改革”。
単なる新商品ではなく、文化的価値を生み出す一手。

アリステアのために開催した絵画展が、アリステア以外に恩恵をもたらす皮肉が面白い。

アリステア紹介未遂事件

本巻最大の緊張シーン。
ここで紹介が成立していたら、物語は一気に破局へ傾いた可能性がある。

エセリアはそれを“まだ”許さなかった。
この判断こそが、彼女の最終目的の深さを感じさせる。

5巻全体のテーマ・考察

テーマは「急がない悪役令嬢」。
エセリアが介入しなくても、グラディクトの気持ちはアステリアにあるので婚約破棄は実現しそう。

しかし王家の人間が、エセリアが婚約者の状況でアステリアを認めるとは思えない。
そうなるとグラディクトは手段を選ばず暴走する姿が浮かぶ。
王家に傷が残るし、それはエセリアが望むハッピーエンドではないのだろう。

剣術大会によってアーロンの露出も増え、次期王太子の片鱗も見えてきている。
落ちていくグラディクトと登場機会が増えてきたアーロン。今後アーロンの有能ぶりが発揮されたのちにフィニッシュか・・・

まとめ

第5巻は、大事件は起きない。
だが、着実に“王太子失格へのカウントダウン”は進んでいる。

グラディクトの焦りは増し、エセリアの悪評は広がる。
しかし信用と実績は彼女のもとへ積み上がっていく。

婚約破棄は時間の問題。
だがその「形」をどう完成させるのか。

エセリアが描く最終局面――
その全貌が、いよいよ見えてきそうな巻だった。

次巻、決定的な一手が打たれるのか。静かな緊張が高まる第5巻である。