悪役令嬢の怠惰な溜め息 3巻レビュー|剣術大会完結とヒロイン本格登場、婚約破棄作戦始動

異世界で生きる物語
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第3巻は、これまで積み上げてきたものが“結果”として現れる巻だ。
エセリア主導で開催された剣術大会は大成功を収め、学園と騎士制度に確かな変化をもたらす。

一方で後半では、ついに乙女ゲーム本来のヒロイン・アリステアが本格始動。
ここから物語は、「エセリアが主役の物語」から「原作ルートが侵食してくる物語」へと姿を変えていく。

3巻の収録話と内容紹介

3巻は第10話〜第13話+番外編を収録。

剣術大会当日。
ディオーネ側妃や騎士団長といった大物来賓が集う中、グラディクト殿下が開会の挨拶を行う。

その裏でエセリアは、側妃や側近たちに巧みに言葉を投げかけ、グラディクトの評価を操作していく。
一方、イズファインは父である騎士団長に、参加者の普段の成績や教師評価をまとめた資料を提出。
これにより、不正な推薦者が浮き彫りになる仕組みが整えられていた。

大会では、人気投票制度も導入され、予選敗退者でも支持を集めた者が本選に進める構成に。
平民のクロードは実力を示し、順当に勝ち上がる。

決勝はイズファイン対クロード。
結果はイズファインの優勝だが、クロードも十分に評価され、剣術大会は来年以降の定期開催が前向きに検討されるほどの成功を収めた。
推薦制度も見直され、また一つ改革が実現する。

新年度が始まり、ついにヒロイン・アリステアが学園に入学。
彼女はエセリアの書いたBL本の読者であり、その内容を“人生の攻略本”として信じ、玉の輿を狙って行動を始める。

最初はアーロン第二王子を狙うも失敗。
やがてグラディクトと接触し、エセリアを下げつつグラディクトを持ち上げることで、彼の心を徐々に引き寄せていく。

エセリアはその動きを察知し、協力者たちと共に「グラディクトに別の正妃候補を選ばせる」作戦を開始。
バッドエンド回避と婚約破棄を両立させるための、新たな一手が打たれる。

登場人物の動き・印象

エセリア

 改革の成果が目に見える形で現れ、周囲からの評価はさらに上昇。
 同時に、ヒロイン登場により“原作知識を持つ側”としての警戒モードに入る。

グラディクト

 剣術大会成功で表向きの評価は上がるが、内心ではエセリアと比較され続けることに苛立ちを募らせている。
 その隙を突かれる形でアリステアに傾いていく。

イズファイン/クロード

実力主義の象徴として描かれる二人。
決勝戦は、この巻のテーマを最も分かりやすく体現していた。

アリステア

 転生者ではなく、物語の“読者”。
 自分を主人公に重ね、物語通りに動こうとする危うさを持つヒロイン

チーム・エセリア

イズファイン、ローダス、シレイア、サビーネ、ミラン、カレナ。
完全に「戦略チーム」として機能し始める。

3巻の見どころ・印象に残った展開

3巻の見どころは、エセリアの行動が
“理想論”ではなく“結果”として結実する点にある。

剣術大会という改革の完成形

平民と貴族の交流、公平な推薦制度、さらには国力アピールまで含めた完成度の高さ。
単なるイベントで終わらせない構成が見事だった。

不正が暴かれる瞬間のカタルシス

近衛騎士推薦者の半数以上が予選敗退。
静かだが確実に効く“ざまぁ”要素として印象に残る。

直接的な描写はなかったが、剣術大会開催の発端となったバーナムはグラディクトの付き人も解雇されたらしい。

ヒロイン=物語の読者という面白設定

アリステアはある程度原作を知っているが、それは「転生」ではなく「読書体験」。
このズレが今後の悲劇や滑稽さを予感させる。

3巻全体のテーマ・考察

エセリアは、物語を“設計”する側。
制度を作り、人を動かし、流れを変える。
一方アリステアは、物語を“なぞる側”。
本に書かれた通りに動けば幸せになれると信じている。

そしてグラディクトは、そのどちらにもなれず、承認に飢えた存在として描かれる。
エセリアが優秀であればあるほど、グラディクトは自分の価値を見失い、アリステアの甘い言葉にすがってしまう。

もしここまでがエセリアの想定通りだとしたら、彼女はすでに“悪役令嬢”ではなく、物語そのものを操るプレイヤーなのかもしれない。

まとめ

第3巻は、
改革の成果とヒロイン登場という二つの大きな節目を描いた巻だった。

剣術大会の成功で、エセリアの立場は盤石になり、一方で物語は原作ルートへと本格的に踏み込んでいく。

アリステアの存在が、
エセリアの未来を救うのか、かき乱すのか。
そして婚約破棄作戦は、本当に思惑通りに進むのか。

物語が“次の段階”へ入ったことを強く感じさせる一冊だった。