『とんでもスキルで異世界放浪メシ』第2巻レビュー|スイ誕生とフェルの“食の進化”が描かれる放浪旅

異世界で生きる物語
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異世界放浪の旅が本格的に動き出す第2巻。

フェルとの食をめぐるやり取りを軸に、ムコーダがこの世界の暮らし方を少しずつ掴み始める。
戦闘や政治ではなく、日常とご飯が中心に描かれる――。

そして終盤、スライムのスイが仲間に加わり、“異世界放浪メシ”の世界がまたひとつ広がっていく。

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2巻の収録話と内容紹介

第2巻には第6章〜第10章を収録。

素材採取を終えたムコーダが冒険者ギルドで大金を得たところから物語は始まる。

道中ではネットスーパーを駆使してフェルに現代グルメを振る舞い、竜田揚げや黒毛和牛のステーキで彼の胃袋を掴む。
その効果でフェルのステータスが上昇し、調子に乗ったフェルは狩りへ――。
帰還時には大量のモンスターの山。ムコーダはあまりの数に呆然とする。

旅を続ける中でムコーダは魔法に興味を持ち、フェルの勧めで初めての魔法修行を体験。
ゴブリンの集落での実戦デビューを経て、魔法の難しさとこの世界の厳しさを知る。
その一方で、フェルもまた菓子パンに目覚めるなど、食の幅を広げていく。

やがて次の街に到着。地図を求めて奔走するムコーダだが、冒険者にボッタくられ、異世界の世知辛さを痛感。
その後、フェル流魚釣りを経て、魚料理を堪能。
最後に、ムコーダの足元に寄り添うスライム――スイが登場する。
小さな出会いが、新たな日常の始まりを告げる。

登場人物の動き・印象

ムコーダ

依然として「戦わない主人公」だが、魔法への憧れや、地図を探して奔走する姿など、少しずつ積極性が芽生える巻。
フェルとの関係も、従えるというよりも旅の相棒としての距離感に感じる。
甘い菓子パンを買って一緒に食べるなど、穏やかな関係性が描かれているのも印象的。

フェル

圧倒的な強さを持ちながら、食への興味がますます深まっていく。
第1巻で「肉命」だった彼が、第2巻では葉野菜や菓子パン、魚といった新たな食ジャンルを受け入れていく過程が面白い。
ムコーダの料理で味覚が“進化”していく様子が、この巻の最大の魅力とも言える。

スイ

終盤で登場する新キャラクター。ムコーダの足元に寄り添い、ゴミを食べてくれるという癒し系の存在。
ムコーダにとって初めての「守る側ではなく、守られる側の仲間」であり、次巻以降の展開が楽しみになる。

2巻の見どころ・印象に残った展開

第2巻では、「食でつながる絆」「異世界の現実」「仲間の輪」という3つの要素が丁寧に描かれている。

フェルとの食のやり取りに笑い、ムコーダの小さな失敗に共感し、スイの登場で心が温まる。
この“日常系異世界”らしい柔らかさが、シリーズの魅力をより際立たせている。

野菜嫌いのフェル、甘辛味噌で心を掴まれる

「葉は不味い」と豪語していたフェルが、ムコーダの中華味噌炒めを食べた途端、無言でかき込むシーンは必見。

味の力が伝説の魔獣をも動かす――という、この作品らしいユーモアと温かみが詰まっている

異世界の“現実”を知る地図事件

銀貨1枚の地図を銀貨8枚で買わされるムコーダ。

初めて「この世界のしたたかさ」に直面するエピソードであり、異世界=優しい世界ではないという現実を感じさせる。

それでも笑いに変えて前向きに受け止めるムコーダの姿勢が、この作品の魅力でもある。

新たな仲間スイの誕生

放浪生活の中で偶然出会ったスライム・スイ。

“ゴミ処理役”としての便利さだけでなく、ムコーダにとっては癒しの象徴。

旅にぬくもりを与える存在であり、第2巻の締めとして非常に心地よい登場シーンだった。

2巻全体のテーマ・考察

第1巻で“異世界に放り出された男”だったムコーダが、第2巻では“この世界を自分なりに生きる人”へと変わり始めている。

戦闘力よりも生活力。支配よりも共存。
ネットスーパーという現代的スキルを通じて、異世界に「現代人のリアルな幸せ感」を持ち込む構造は、本作ならではの魅力だ。

また、スイの登場によって「守る存在」を得たことも大きい。
ムコーダが他者と関わる動機が“守りたい”“支えたい”へと変わっていく予兆が、この巻に垣間見える。・・・かもしれない。

まとめ

第2巻は、まさに“旅と日常のあいだ”を描く巻。
戦いではなく、食事と会話で成り立つゆるやかな異世界。
フェルの食の変化、地図の一件、そしてスイの登場――。
どの出来事も小さいけれど、確実にムコーダの世界を広げていく。

次巻では、スイが本格的に仲間として活躍することが期待される。
ムコーダ・フェル・スイ、この3者の関係がどんな放浪メシを生み出すのか――今後の展開が楽しみだ。

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