第2巻は、エセリアが「望まぬ婚約」から本気で逃げにいく巻だ。
しかも選んだ手段は、感情論でも破滅回避ムーブでもない。
根回し・制度設計・世論操作――全部やる。
一方で物語は、学園内の身分差問題や騎士制度の歪みにも踏み込み、悪役令嬢ものの枠を越えた“社会派”の顔を見せ始める。
そしてラストには、ついに本来のヒロインが登場。
物語は静かに、しかし確実にギアを上げていく。
2巻の収録話と内容紹介
2巻は6~9話と番外編を収録。
王命によるグラディクト殿下との婚約を解消するため、エセリアは「自分から断る」のではなく、相手に破棄させるという方針を立てる。
イズファイン、兄ナジェーク、サビーネに事情を打ち明け、協力体制を構築。
さらに学園で出会った攻略対象ローダスと幼馴染のシレイアも巻き込み、話はいつの間にか「婚約解消」だけでなく「王太子の資質問題」にまで発展していく。
その最中、学園で起きた貴族と平民の衝突事件をきっかけに、エセリアは近衛騎士推薦制度の不公平さを知る。
彼女が打ち出した解決策は、騎士科全員参加の剣術大会だった。
グラディクトを名誉会長に据え、学園長・王妃・有力者へと根回しを進め、BLファンクラブ「紫蘭会」すら動員して開催準備を整えるエセリア。
こうして学園生活1年目は終わりを迎え、最後に乙女ゲームのヒロイン・アリステアが学園に入学してくる。
番外編では、学園入学前のエセリアとクオールの淡い交流が描かれ、今後の恋愛ルートを匂わせて2巻は幕を閉じる。
登場人物の動き・印象
「悪役令嬢が婚約破棄を望む」という状況を、個人の問題ではなく国家・制度レベルにまで拡張していく。
口の上手さと企画力がさらに際立ち、もはや政治家の風格。
名誉や評価に弱い一面が見え始める。
エセリアの策によって評価が上がるほど、婚約破棄が遠のくという皮肉な立ち位置に。
エセリアの「婚約解消宣言」を聞いたことで、明確に味方側へ。
特にサビーネの動機がBLという点は、シリアスになりすぎない良い緩衝材。
乙女ゲームの攻略対象とその幼馴染。
早くもエセリアの影響力に巻き込まれ、彼女の協力者として動き始める。
ラストでついに登場。
まだ何も起きていないからこそ、嵐の前の静けさが際立つ。
2巻の見どころ・印象に残った展開
2巻の面白さは、エセリアの目的が一貫しているのに、手段がどんどんスケールアップしていく点にある。
婚約破棄を「工作」する悪役令嬢
泣いたり我慢したりせず、相手に言わせるための環境を整えるという発想がエセリアらしい。
仲間を増やし、外堀から埋めていく様子は痛快そのもの。
剣術大会という制度改革イベント
身分差問題を「かわいそう」で終わらせず、大会という形で可視化・解決しようとする構成が秀逸。
しかも、国力アピールや外交まで視野に入っているのが抜け目ない。
BLファンクラブ紫蘭会の万能っぷり
新刊BLという報酬で人を動かすエセリア。
ギャグ要素だが、情報網・動員力として見るとかなり有能な集団で笑える。
2巻全体のテーマ・考察
第2巻で際立つのは、
エセリアが「婚約破棄=個人の幸せ」の問題として扱っていない点だ。
彼女は、無能な王太子が国を停滞させること、不公平な制度が人材を潰すこと、
そうした“構造的な問題”を見過ごせない。
だからこそ、王太子変更まで視野に入れるという、常識外れの発想に至る。
一方で皮肉なのは、彼女が動けば動くほど、グラディクトの評価が上がってしまう点だ。
「嫌われて破棄される」予定が、「有能な婚約者として評価される」方向に転びかねない。
このズレこそが、本作の面白さであり、ヒロイン・アリステア登場後にどう収束するのか、非常に気になるポイントだと思う。
まとめ
第2巻は、婚約破棄を目指す悪役令嬢が、気づけば学園と国家を巻き込む改革者になっている巻だった。
登場人物は相変わらず多いが、誰一人「ただのモブ」で終わらない配置がされており、
今後の伏線として効いてきそうな予感が強い。
そしてついにヒロインが登場。
エセリアの思惑と、物語本来のルートがどう交錯するのか。
次巻から本格的に始まるであろう“乙女ゲーム本編”に、期待せずにはいられない。


