経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 第1巻 レビュー|追放された青年が「のんびり旅」に出るまでの、やさしい序章

異世界で生きる物語
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Sランクパーティを追放された青年が、ひとりで始めた「のんびり傷心旅行」。

だけど旅のはじまりは、意外にも穏やかで、ちょっぴり温かい――

本作『経験値貯蓄でのんびり傷心旅行』第1巻では、主人公トールが最強へと覚醒しつつ、自分の心とゆっくり向き合っていく過程が描かれます。

第1巻の収録話と内容紹介(ネタバレかも)

経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 1 〜勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ〜
経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 1 〜勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ〜

経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 1 〜勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ〜

[著者]奏ヨシキ [原作]徳川レモン [キャラクターデザイン]riritto

Renta!
  • 第1話:Sランクパーティ「白い牙」から追放されたトール。ひとり荒野を彷徨う中でモンスターに襲われ、反撃したその瞬間、「経験値貯蓄」スキルが発動。一気にLv300という超レベルに覚醒する。信頼できる仲間が欲しいと、奴隷店で出会った獣人少女・カエデを新たな旅のパートナーに迎える。
  • 第2話:スキル経験値貯蓄・魔力貯蓄といった他の貯蓄系スキルも覚醒し、まさに“強すぎる自分”に戸惑うトール。カエデとの日常描写も。
  • 第3話:トールがパーティを追放された本当の理由が明かされる。原因は、勇者セインの嫉妬――。表向きは「無能な荷物」とされていたが、実は仲間の女性陣に好意を持たれていたことが追放の引き金だった。
  • 第4話:カエデとの旅が始まり、ダンジョンに挑戦。戦闘を通じて彼女のレベルも急成長し、まさかの“少女→美女”への進化を遂げる。
  • 第5話:トールとカエデは「漫遊旅団」と名乗ることに。旅の目的は“漫遊すること”。そんな中、盗賊に襲われた馬車を助け、中にいた貴族令嬢・マリアンヌと出会う――。

世界観と物語の方向性(1巻時点)

ざまぁ系異世界ファンタジーのような導入で始まりながら、物語の主軸はあくまで“心の再生”と“人との出会い”な気がします。
異世界らしいスキルや戦闘の描写もありますが、物語のトーンは驚くほど穏やかで優しい。


最強になったからこそ、「戦いに生きる」のではなく、「旅を楽しむ」ことを選ぶトールの姿に、癒しの空気が流れています。

登場キャラクターの印象と関係性

  • トール:追放された元冒険者。Lv300というチート級の強さを手にしながらも、決して驕らず、心に傷を抱えながら静かに旅に出る姿が好印象。物腰柔らかく、思慮深い青年。
  • カエデ:獣人族の少女。最初はあどけない子供のようだが、トールの加護によって急成長し、姿も大人びていく。当初は年齢差もあり、恋愛というよりは親子のような関係性だった。
  • マリアンヌ&ウララ:5話から登場。貴族とその使用人だが、トールたちに偏見を持たず、素直に交流してくれる柔らかな存在。今後の旅の仲間となる予感も。

主な見どころ・印象に残った展開

個人的に思う見どころや注目シーンは以下。

経験値貯蓄スキルの覚醒と“後から報われる”快感

いきなりLv300に跳ね上がる成長演出は、本作ならではの爽快ポイント。しかも追放されて即日というのも面白い。
ただしそれ以上に、「今まで報われなかった時間が、無駄じゃなかった」と感じられるところが、心にじんわり響きます。

追放の真相が語られる“静かなざまぁ”

セインが女性メンバーのトールに対する好意を妬んだ結果の追放劇。

ここで“本当に悪かったのは誰か”が明確になり、読者の共感がよりトールに寄っていきます。激しい報復はないけれど、読者の中で「ざまぁ」が育っていく演出が秀逸です。

カエデとの出会いと成長が、静かに心を癒してくれる

レベルアップによる成長=物理的な“進化”も描かれるカエデですが、それ以上に彼女とトールのやりとりが柔らかく、物語の空気を温かくしてくれます。

戦力としてのパートナーというより、“心の支え”という存在感。(ハーレムへの伏線ではないと思いたい)

まとめ

第1巻は、最強の力を得た主人公が、傷心の中で“のんびり生きる”ことを選ぶまでの物語。

派手さはないけれど、地に足のついた旅の始まりとして、静かに心に沁みるエピソードが詰まっています。

裏切りや絶望から一歩踏み出す物語を、優しい視線で見守りたい方におすすめの1冊です。