経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 第2巻レビュー|淡々とした日常から、じわじわ効く爽快ざまぁへ — そしてまた穏やかに

異世界で生きる物語
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第2巻は、旅の「日常」としての退屈さが逆に安心感を生み、9話以降の伏線回収で読者の溜飲が下がる──そんな流れが心地よい一冊。

トールとカエデの漫遊は派手さよりも人の温かさが主役で、読後はほっと一息つきたくなる気分になります。

『経験値貯蓄』巻ごとレビュー一覧

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第2巻の収録話と内容紹介(ネタバレかも)

経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 2 〜勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ〜
経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 2 〜勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ〜

経験値貯蓄でのんびり傷心旅行 2 〜勇者と恋人に追放された戦士の無自覚ざまぁ〜

[著者]奏ヨシキ [原作]徳川レモン [キャラクターデザイン]riritto

Renta!
  • 第6話:マリアンヌがモンスターに攫われる事件が発生。トールたちは救出に向かい、物語が本格的に動き出す。
  • 第7話:マリアンヌと使用人のウララが同行しての地下遺跡へ潜入。仲間が増えることで旅の雰囲気が柔らかくなる。
  • 第8話:地下遺跡攻略で仲間たちの成長が明確に表れるが、描写は淡々としていて“目的のない冒険”感が強い。
  • 第9話:かつての仲間・セイン一行が既にトールたちが攻略したダンジョンへ到着。ダンジョンが消失して混乱する様子など、個人的に2巻で一番面白いポイント。
  • 第10話:別の街へ移動し、漫遊旅団の活動は続く。旅の合間の穏やかな描写が多く、のんびり感が際立つ。
  • 第11話:新たな街でデスアント討伐の依頼を受ける(討伐の顛末は3巻収録)。次巻への期待を残して巻が閉じる。

2巻時点の世界観と物語の方向性

序盤は「旅の雑務」とも言える小さな事件やダンジョン攻略が続き、戦闘シーンもあるにはあるが全体のテンポは落ち着いています。

物語は「無双して見せ場をつくる」よりも、出会いと交流、そしてトール自身の内面の揺らぎ/落ち着きに時間を割く構成。

9話の出来事が1つの転換点になり、以後は物語がぐっと読者の感情に響く瞬間を作ってくれます。

登場人物の動き・印象(2巻)

  • トール:強くなったはずなのに、あくまで穏やかに行動する姿が魅力。旅人としての余裕が増してきて、仲間を見守る大らかさが出てきます。
  • カエデ:トールの存在で急速に成長する。トールに料理を振舞うなど、親子のような関係から恋人のような関係になってきたように思う。
  • マリアンヌ&ウララ:貴族でありながら偏見がなく、旅の仲間として自然に溶け込む。特にマリアンヌは高レベルながら人間味があり、今後も登場しそうな予感。
  • セイン(勇者):嫉妬・傲慢さが変わらず顔を出す存在。9話の顛末で、その浅ましさが皮肉に曝される描写が効果的。
  • パン太、ロー助:古代種が創り出した人造生物、眷獣。戦闘もできるが癒し枠担当か・・・

主な見どころ・印象に残った展開

個人的に印象に残った点は以下。

序盤の淡々とした日常描写

地下遺跡攻略や街でのやり取りが続くが、それが逆に「旅をしている実感」を生む。激しい山場がなくても読ませる筆致がある。

第9話の伏線回収&爽快感

既に攻略済みのダンジョンを前に狼狽するセインたち。

直接的な制裁ではなく“事実が示す皮肉”が、読者の爽快感を生む重要な瞬間です。

また、マリアンヌに対してセインが誘惑の魔眼を使うが、セインよりもレベルが高ったため効果なし。

地下遺跡の攻略はこのためにあったのかと思えるくらい注目ポイント。

ラストの次巻への布石

11話で受けたデスアント討伐の依頼は、3巻でのクライマックスを匂わせる良い仕掛け。

ここで終わることで、次巻へのワクワク感が自然に続きます。

まとめ

第2巻は、劇的なアクションよりも日常の積み重ねと、人とのつながりが主役のやさしい巻。

9話の伏線回収で爽快さも味わえるため、「癒されつつも時々スカッとしたい」読者にはぴったりです。続く3巻での大きな一仕事(デスアント討伐)に備えて、心地よくページを閉じられる構成になっています。