第10巻は、海の街ベルレアンを舞台に“観光回”の魅力がぎゅっと詰まった一冊。
クラーケン討伐という依頼はありつつも、実質は海の幸三昧&のんびり満喫のスローライフ。
ムコーダの妄想が次々と実現していく“夏休み感”が心地よく、仲間たちの無邪気さもひときわ際立つ巻でした。
10巻の収録話と内容紹介
10巻は54~59話を収録。
54話
ベルレアンに到着したムコーダ一行。クラーケンの影響で漁に出られず沈む街の状況をマルクスから聞き、討伐を請け負うことに。
手配された宿はまさかの貴族の元別荘の大豪邸。到着早々、ムコーダ特製オークカレーで一行は大盛り上がり。
55話
クラーケン討伐へ向かうため船に乗ろうとしたが、フェルが乗った瞬間に船が損壊。
急遽スイを巨大化させ、スイを“船代わり”にして出発。海上ではクラーケンとシーサーペントの乱戦に遭遇し、フェル&ドラちゃんが一瞬で撃破。さらに巨大魚もスイが撃破するという豪快展開。
56話
ギルドで討伐結果を報告し、そのままクラーケン解体と大宴会へ。
海の男たちと一緒に巨大クラーケンを焼いて大騒ぎ。ベルレアンに久々の活気が戻る。
57話
名物の朝市を散策し、海鮮食べ歩きを堪能。どの店でもサービスされ、買った分よりオマケの方が多くなるムコーダ一行への好待遇が微笑ましい。
58話
調達した海産物で“海鮮BBQ大会”。特注のBBQコンロがここで登場し、フェル・スイ・ドラちゃんが各自好きな具材を串に刺して楽しむ姿が印象的。夜には花火もして、完全に夏の思い出作り。
59話
滞在から1週間、釣りや散歩でのんびり過ごす日々。豊富な海鮮を食べ続けたことでムコーダの“寿司欲”が限界になり、ネットスーパーで購入した食材で巨大手巻き寿司を作ることに。
食後、フェルたちは“運動”がてら狩りに行き、レッドドラゴンを見つけてテンションMAXになったところで幕。
登場人物の動き・印象
- 海の街に来るだけでテンションが高く、妄想をそのまま実現していく楽しさが際立つ巻。
- 料理の幅もさらに拡大。カレー・海鮮BBQ・巨大寿司と、やりたい放題のフルコース。
- 海鮮への評価がやや高め。「まあまあやるではないか」というムコーダ飯以外の飯に珍しい褒め言葉も。
- 船破壊事件や、最後のレッドドラゴンへの反応など、相変わらず圧倒的存在感。
- 巨大化して“船役”を務めるという活躍。串刺しが器用で可愛らしい描写が光る。
- 食べ歩きにも積極的で、BBQの串刺しも上手。終始ご機嫌で、読者も癒やされる存在感。
10巻の見どころ・印象に残った展開
戦闘よりも“旅行気分”が強く、シリーズでも屈指の癒やし巻。海鮮、BBQ、花火、寿司……ムコーダの「海に来たらやりたかったこと」がすべて実現する満足度の高さが魅力。
クラーケン討伐、まさかの瞬殺劇
クラーケン&シーサーペントの豪華共演にも関わらず、フェルとドラちゃんにより秒で終了。さらに巨大魚すらスイが一撃という“主人公の仲間、強すぎ問題”が炸裂。
討伐が主ではなく、その後の宴が主というシリーズらしさが濃厚に出た回でもある。
ベルレアンの“海の恵み”を食べ尽くす旅
朝市の食べ歩きから海鮮BBQ、そして巨大寿司まで、海グルメが怒涛の登場。
特にムコーダの「寿司食べたい欲」が爆発し、ネットスーパー頼りの巨大巻き寿司に挑む展開は、読んでいてワクワクする。
なおシーフードカレーは出てこなかった。
スイ&ドラちゃんの“串刺し作業”が愛らしい
海鮮BBQでは、スイとドラちゃんが夢中で串に具材を刺す姿がとにかく可愛い。
戦闘で無双する彼らが、日常ではこうして子どものように楽しむギャップが本作の魅力。
10巻全体のテーマ・考察
第10巻は「海辺のスローライフ」と「仲間たちとの夏の思い出作り」が中心。
クラーケン討伐は物語的には大きな事件だが、本編ではむしろ“冒頭でサクッと終わる前座”として描かれ、比重が置かれていない点が非常に本作らしい。
特に興味深いのは、ムコーダがドランの街でちゃっかりBBQ用のコンロを購入していたこと。
フェル達がいれば「クラーケンなんて余裕。」という考えがどこかにあったのではと思う。
また、ベルレアンの人々との交流と海の幸の数々が、旅の1ページとして温かい余韻を残してくれる巻でもあった。
※これは余談だが、毎巻必ず登場していた女神たちが今巻では登場しなかった点も新しい。
まとめ
第10巻は、海の街でのんびりと食を楽しむ“息抜き巻”として非常に満足度が高い。クラーケン退治に始まり、BBQ、花火、巨大寿司と、読んでいても心が軽くなる要素がたっぷり詰まっている。
そして最後に登場したレッドドラゴンが次巻へのフックとして強烈。
海の青い空気感から一転、久々に“冒険者としての刺激”が戻ってくる予感が漂う。
第11巻はバトル成分が増えるのか、それともまた食の旅が続くのか——次の展開が楽しみで仕方ない巻だった。


