リリスの成長、静かに進む巨塔侵入、そしてついに動き出した魔人国側――。
第20巻は大規模戦闘こそないものの、次なる激突へ向けて“確実に歯車が噛み合っていく”準備の巻といった印象だ。
敵も味方もそれぞれが布石を打ち、物語は再び大きな嵐の前触れを感じさせる展開へと進んでいく。
20巻の収録話と内容紹介
第20巻は148話~155話を収録。
第148話〜リリス、王女としての覚悟を見せるレベリング開始〜
ナイン公国会議に向けた準備として、リリスのレベル上げが本格始動。
ライト、カオス、オルカのサポートのもと、役割分担された狩りが展開される。
「苦労せずに玉座に就いても誰もついてこない」というリリスの言葉からは、王女として、人種の未来を背負う者としての覚悟がはっきりと伝わってくる。
一方その頃、魔人国側マスターの一人・ミキが、奴隷に紛れて巨塔への潜入を開始していた。
第149話〜第151話:一般人シリカとミキの出会い、そして正体〜
視点は巨塔で商店を営む一般人・シリカへ。
彼女の過去、奴隷から保護され、巨塔で人並みの生活を手に入れた背景が描かれる。
その商店に新たに加わったのがミキ。
表向きは同じ境遇の少女だが、実際はレベル6000の蜂召喚術師であり、ギフト「クイーン・フェロモン・ビー」を持つ魔人国のマスターだった。
催眠による情報収集、さらに「シャドー・ビー」で他のマスターへ情報を送信するなど、巨塔内部はすでに魔人国マスターに筒抜けになりつつある危険な状況が浮き彫りになる。
第152話〜第153話:リリスの視察とライトの“違和感”
リリスの2回目のレベル上げが描かれたのち、今度は「一人の人種」として巨塔街を視察することに。
ライト、ネムム、ゴールドとともにシリカの商店を訪れ、偶然にもミキと直接対面することになる。
ヒアリングの中でミキは巧妙に嘘と真実を混ぜて答えるが、それに対してライトは明確な“違和感”を覚える。
この時点でライトはまだミキの正体を断定していないが、「何かおかしい」という直感だけは確実に掴んでいた。
同時に描かれるのが、魔人国側マスター・ダイゴ。
人種を餌にモンスターを狩る狂気的なレベル上げの姿と、シャドー・ビーによって知らされた“巨塔の獲物情報”。
巨塔へ向かうフラグがここで強く立てられる。
第154話〜第155話:避難訓練という名の罠、そしてミキの正体が露わに
巨塔街で行われた避難訓練は、実はライトが仕掛けた“ミキをおびき出す作戦”だった。
妖精メイドの失態を装った誘導、巨塔内部へ誘い込まれたミキは、ついに正体を見抜かれてしまう。
鑑定と裏取り、そしてアイスヒートの一撃で、普通の少女ではないことが完全に露呈。
転移で逃げようとするも、巨塔内の転移阻害によって脱出不能。
「目的と組織、全部吐いてもらおうか」
ライトのその一言とともに、第20巻は次巻へと緊張のバトンを渡して幕を閉じる。
登場人物の動き・印象
この巻で最も成長を感じさせた人物。
ミキの言動から違和感を掴み、裏取り・鑑定・誘導まで完璧にこなす姿は、完全に“策士”の域に入った印象。
王女としての覚悟と、現場に立つ者としての姿勢の両方が描かれた巻。
レベル上げだけでなく、「人種の目線で街を見る」という姿勢に、未来の王としての器を感じさせる。
レベル6000。
可愛いものへの異常な執着と、冷酷さ、情報収集能力を併せ持つ危険なマスター。
ついに正体が露見し、物語の表舞台に引きずり出された存在。
レベルアップ至上主義の狂人。
巨塔への襲撃フラグが立ち、次巻の大規模バトルを強烈に予感させる存在となった。
20巻の見どころ・印象に残った展開
第20巻は派手なバトルこそ控えめだが、「静かに仕掛け、確実に追い詰める」知略戦の見どころが詰まった一冊だった。
王女リリスの覚悟あるレベリング
従者任せにせず、自ら血と汗を流して強くなろうとするリリスの姿勢が印象的。
単なる“守られる王女”ではなく、“導く王女”としての成長がはっきりと描かれた。
ミキの異常性と潜入劇
可愛いものへの歪んだ執着、生きたままの人間にアレコレしようと妄想するなど、ミキの狂気性がじわじわと読者に伝わってくる構成。
情報収集の冷静さとのギャップが不気味さを際立たせている。
ライトの鋭すぎる観察眼
嘘にすべて騙されないライトの成長は、この巻最大の見せ場の一つ。
言葉ではなく“違和感”から詰めていくあたりに、主人公としての格の上昇を強く感じさせる。
ダイゴ参戦の不穏な予兆
レベル300程度を雑魚扱いするダイゴの狂気と、巨塔へ向かう明確なフラグ。
次巻での大規模バトル展開を確信させる強烈な引きだった。
20巻全体のテーマ・考察
ミキが巨塔への侵入者だと判明したきっかけは、自身の両親についてヒソミを思い浮かべながら語ったから。
ライトはヒソミとの面識はないが、カヴァーのことは知っている。
怪しい侵入者として目的を吐かせるために罠にかけたが、カヴァーを知るミキからマスターに関する情報が得られるかもという打算もライトにはあったのかもしれない。
もちろん現段階ではミキがマスターであることも知らない。
次巻はミキの持っている情報をどこまでライトが知ることになるのかがキーになりそう。
- 竜人帝国側のマスターのメンバー情報
- 魔人国側のマスターのメンバー情報
- Cとはどういった存在なのか
- その他
すべて19巻144話からの推測。
ライトの一番欲しい情報は、自身が殺されそうになったきっかけである「マスターとは何なのか?」である。
当然マスターであるミキは「マスターとは何か?」を知っていると思うが、ダイゴ襲来フラグがある状態で、1巻から続くこの謎が明かされるとは考えにくい。
まとめ
第20巻は、嵐の前の静けさ――まさにその一言に尽きる巻だった。
リリスの成長、ライトの鋭い洞察、ミキの正体判明、そしてダイゴの襲来フラグ。
すべてが「次に来る大戦」のための布石として丁寧に積み重ねられているように思える。
ミキはどこまで情報を吐くのか、それともダイゴ襲来で有耶無耶になるのか。
次巻は否が応でもテンションが上がる引きだった。


