第19巻は、獣人連合国との戦いが一区切りしたことで、物語が“国内の復讐劇”から“世界規模の覇権争い”へと大きく進展する巻です。
ライトたち巨塔の脅威はついに各国へと知られ、竜人帝国・魔人国・人種王国それぞれが思惑を巡らせはじめます。
視点が多層的に切り替わる構成で、キャラクターたちの思想や政治背景が立ち上がり、読み応えの厚みが一気に増した印象です。
19巻の収録話と内容紹介
19巻は140話~147話を収録。
- 140話:ライトとカオスにより「双血のマガタマ」を破壊。ガムとレバトは処刑対象となり、奈落へ。
- 141話:竜人帝国側。ヒソミが巨塔を監視するも失敗。ヒロは「巨塔にはCがいる」と誤認し、警戒を強める。
- 142話:獣人連合国戦後処理。族長たちの公開処刑により、獣人族は巨塔へ服従の意思を示す。
- 143話:奴隷にされた人種たちの解放。ミヤがダークに告白しそうになるがクオーネ乱入。エリーはガムの記憶から「フェイ」と竜人帝国の影を感知。
- 144話:魔人国へ場面転換。マスターたち、巨塔と“C”の所在をめぐり議論。第一王子ヴォロスは「Cは魔人国が確保済み」と内心でほくそ笑む。
- 145話:人種王国。王女リリスは王位を継ぐ計画を進めるが、最も信頼していたノノが魔人国の間者だと判明。深い絶望ののち覚悟を決める。
- 146話:獣人連合国の敗北を受け、ナイン公国会議の開催が決定。各国が巨塔を“脅威”として正式に認識し始める。
- 147話:リリスは巨塔へ協力を要請。自らのレベリング・毒殺対策・会議同行の三点をライトに求める。ライトは了承するが、エリーやアオユキは不信感を抱く。
登場人物の動き・印象
復讐という目的を維持しつつも、“巨塔を軸とした国家勢力”の長として動き始める。立場が明確に変わりつつある。
ライトを“道具扱いする者”に対して強い警戒と敵意を示す。感情面がはっきり描かれた巻。
信頼していた人間が間者で、分身ユメ以外信じられない状況に直面しながらも、国家変革へ踏み切る決意を固める。覚悟の描写が強い。
ミキ、ゴウ、ダイゴ、ギラ、ドクの5名。Cを崇拝。竜人帝国マスター陣とは対立関係か。政治構造・支配形態が明瞭になった。
魔人国第一王子。「Cは魔人国が握っている」と語る内心が物語の大きな伏線に。権力逆転を狙う野心家。
19巻の見どころ
世界が動く気配と、思想・勢力の駆け引きの緊張感が強い巻。
アクションの爽快感は控えめだが、政治劇・心理戦が物語の奥行きを深めています。
巨塔が「世界の脅威」として認識される瞬間
獣人連合国を圧倒的な力で屈服させたことで、竜人帝国・魔人国は巨塔がCに関与している無視できない存在として正式に扱い始める。
一方の人種王国の現国王は、触らぬ神に祟りなしといった感じで動く気配なし。
こういった3国のそれぞれの描写があり非常に面白い。
魔人国“マスター”の正体と力関係が明らかに
144話は政治・世界設定ファンにとって特に重要。
魔人国は魔人種の国だが、その国家運営を実質支配しているのは人種のマスターたち。「種族」より「力」が支配する世界観が立ち上がる。
第一王子であるヴォロスでさえ、マスター達に強く出れないことから、魔人国を牛耳っているのはマスター達なのかもと思えて印象的。
リリスの覚悟と孤独
145話、ノノの裏切りが発覚する場面は感情描写が強烈。“家畜国家”と呼ばれ続ける人種王国が変わるかどうかの分岐点にも思えた。
結果リリスは人種王国を変えるために、自分の見栄も自尊心も飲み込んで、一番効果的な力を選んだ。
ここだけ切り取ると、リアルな国政みたいで印象的。
19巻までの状況整理
目新しい情報が目白押しで盛り上がった19巻。気になるポイントを整理しておきます。
- 魔人国は「マスター=人種」に支配されている構造。(竜人帝国にはそういった描写は現状ないが、マスター達が自由に動いている点から魔人国と似たような構造なのかな)
- 魔人国側のマスター5名はCを崇拝。竜人帝国側のマスター6名はCを敵視、警戒している。
- 現状、ライト達巨塔側にマスターとやり合う理由はないが、ライトの故郷を滅ぼしたマスターが11名の中にいれば一気に敵対関係になる。
- Cは魔人国が封印しており、マスター達はそれを知らない。ヴォロスがどう動くのか・・・
まとめ
第19巻は、派手な戦闘よりも世界が動き始める音が聞こえる巻でした。
各国・各勢力の意図が絡み合い、誰が味方で誰が敵なのかが揺らぎ始めます。
次巻はリリスのレベリングから始まって、政治ドラマ × 交渉 × 視線のぶつかり合いが中心になるのか・・・
それとも魔人国側のマスターが先に動き出すのか・・・




