第6巻は、ヘラクレスとジャック・ザ・リッパーという相反する存在の“原点”が明かされ、戦いの意味が大きく反転する重要巻。
正義と悪意、英雄と怪物――ふたりの生き様が激突する瞬間が描かれ、読み応えが格段に増す一冊となっている。
6巻の収録話と内容紹介
6巻は22~25話を収録。
■22話
ジャックの多彩なナイフ投擲に晒されながらも、ヘラクレスは一歩ずつ接近。アレスの語りによって、ヘラクレス=元アルケイデスの過去編へ突入。
■23話
アルケイデスの神軍襲来との対峙、アムブロシアによる覚醒、アレスとの激突、ゼウスの介入と“神への誘い”が描かれる。英雄が誕生する瞬間の物語。
■24話
決して揺らがぬ“正面突破の戦士”ヘラクレス。ついに第一の御業・ネメアの獅子を発動。一方ジャックはワイヤーを張り巡らせ三次元攻撃を展開し、第二幕へ。
■25話
場面はジャックの過去へ。母との関係、感情の「色」が見える右目、そして価値観が壊れる瞬間が描かれる。両者の原点が明かされ、対決の意味が深まっていく。
登場人物の動き・印象
傷を負いながらも“正義の象徴”として歩みを止めず、ナイフを握り潰す姿が象徴的。過去編で強さの根源と覚悟が明確になる。
二人の存在がヘラクレス過去編の軸に。特にアレスの語りはヘラクレス像を強化し、ゼウスの“スカウト”は物語の深みを増す。
劇場の演者のように戦場を操り、ワイヤーによる立体トリックでヘラクレスを翻弄。過去が明かされ、狂気の根がより鮮明に。
6巻の見どころ・印象に残った展開
英雄の覚醒と怪物の原点――二つの“物語”が戦いに重なり、単なる力比べではない深いドラマが浮かび上がる。
さらに、両者が歩んできた「生き方」の違いが戦いの中で鮮明に対比され、読者に強烈な余韻を残す構成となっている。
ヘラクレス誕生の物語が圧巻
アムブロシアの試練、アレスとの激突、ゼウスからの勧誘など、神話を独自解釈で再構築した壮大な英雄譚が展開。
そこに描かれるのは、ただ強いだけの英雄ではなく、苦難を受け止めて前へ進む「意志」を持った人間としてのヘラクレス。
過去編で積み上げられた感情がそのまま現在の戦いに直結する構成で、物語全体の厚みを一段深くしている。
ジャックの“色を見る右目”と崩壊の瞬間
感情が色で見える能力がもたらした希望と絶望。母の言葉がジャックの価値観を決定づける重要シーン。
「母の色」が世界の全てを変えてしまう瞬間は、とくに読者の心をえぐる描写として強烈。
この能力が戦闘だけでなくジャックの倫理観そのものを歪めていく過程が、怪物の“必然性”として丁寧に描かれている。
ワイヤーとナイフの三次元戦闘
ただナイフを投げるだけの展開から一転。ピアノ線を張り巡らせた空中殺法へ発展し、ヘラクレスの“御業”との激突がドラマを高める。
トリッキーという言葉が似あうジャックさん。6巻ラストではビッグベンの時計の文字盤をぶん投げる暴挙に出るがこれも狙いがあるのだろう。
6巻全体のテーマ・考察
第6巻の軸は「正義と悪の源泉」。
ヘラクレスは“救う者としての正義”、ジャックは“裏切られた愛の欠落”が根になっている。
両者の過去が明かされることで、ただの善悪対立ではなく、“生き様の衝突”へと格上げされている点が本巻の最大の意義だと思う。
まとめ
第6巻は、ヘラクレスとジャックそれぞれの人生を深掘りすることで、戦いが物語として強烈な説得力を持ち始める巻だった。
過去を知ったうえで読み返すと、両者の一挙手一投足に重さが宿る。
次巻ではついに戦いが大きく動き出すはず。英雄と怪物、その差がどこで埋まるのか――続きが気になって仕方ない締めくくりでした。


