第7巻では、5〜7巻にわたって描かれてきたヘラクレスVSジャック・ザ・リッパー戦がついに決着。
ただのバトルではなく、「愛」「恐怖」「信念」が互いの存在を暴き出すような、驚くほど静かで深い心理戦が展開されます。
小説のように余白と解釈を読者へ委ねる描写が多く、アクションと哲学がもっとも濃密に混ざり合った一冊といえるでしょう。
7巻の収録話と内容紹介
7巻は26~29話を収録。
▼26話
ジャックがビッグベンの文字盤を神器化し、ヘラクレスの左腕を切断。
神器の正体は大バサミでも武器袋でもなく、“手袋”。触れたものをすべて神器化するという破格の能力が明らかに。
ワルキューレ11女・フレックとの強引な神器化も描かれ、ロンドンそのものがジャックの武器になるという恐ろしい状況に。
▼27話
能力が判明したジャックは「終幕」を宣言。
ジャックが求める「恐怖の色」と、ヘラクレスが抱く「愛の色」が対照的に描かれ、二人の価値観が激突。
ジャックはヘラクレスの感情が、幼少期の母と同じ色だと気づくが、そこに“偽物と本物”の違いがあると直感する。
▼28話
ヘラクレスが奥義・“第十二の御業 ケルベロス”を発動し、自らと融合。
圧倒的な破壊力でジャックを追い詰めるが、代償としてヘラクレス自身の肉体が侵食されていく。
建物丸ごとの神器化、空中戦、鉄柵の刺突――息を忘れる攻防の末、なお立ち上がるヘラクレスの姿が描かれる。
▼29話
左腕を失いながらも、肉弾戦で優勢に立つヘラクレス。
しかし侵食は加速し、時間切れが迫る。
最後の攻防で、ジャックは鉄柵を囮にし、本命として“自分の血”を手袋で神器化。
その手刀がヘラクレスを貫き、戦いは人類側の勝利で幕を閉じる。
登場人物の動き・印象
触れたものを神器化する手袋の能力で、ロンドンをまるごと戦場に変える“物語性の怪物”として描写。勝利しながらも、心では負けを認めるという複雑な感情が非常に印象的。
第十二の御業という究極の技を使いながら、自身が消耗しきる覚悟を示す“英雄の在り方”を貫く。愛を捨てないまま散る、その姿自体がメッセージ性を帯びていた。
ジャックとの相性の悪さを抱えつつも、戦略のために神器化を黙認された存在として描写。彼女の嫌悪と、無理やり心を“合わせられた”瞬間の緊張感が強い印象を残す。
7巻の見どころ・印象に残った展開
この巻の核心は、ただの“戦闘の決着”ではなく、ジャックとヘラクレスが互いの価値観や「色」を通じて心の奥底を暴き合う点にあります。
神器のトリック、圧巻の第十二の御業、そして心の勝敗――第7巻はシリーズ随一の“読み応え”が詰まった巻です。
触れたものすべてが神器化する“手袋”の真実
舞台そのものを武器に変えるという前代未聞の能力は、ヘラクレス戦最大の仕掛け。
ロンドンの街がまるで劇場セットのように機能する演出が強烈。
戦いの舞台はジャックの要望だったが、ここまで計算してのことだったのか・・・
心理の深淵を暴く“感情の色”の物語
ジャックの右目が捉える「感情の色」を軸に、彼の過去と価値観がヘラクレスとの対比で立ち上がる。
母の“偽の愛”と、ヘラクレスの“本物の愛”。
その差異にジャックが気づく描写は、この戦いの核心ともいえる深さがある。
勝利と敗北が交錯するラストシーン
血の神器化という逆転の一手でジャックが勝利。
しかしヘラクレスの色は変わらず、ジャックは心で“敗北”を悟る――読後に深い余韻を残す名シーン。
7巻全体のテーマ・考察ポイント
この巻を貫くテーマは、「本物の愛とは何か」「恐怖と快楽に身を委ねた者の行き着く先」。
ジャックの幼少期、母との関係、ヘラクレスの愛情との対比によって、彼の“歪んだ愛の探求”が垣間見える。
戦いの勝敗以上に、ジャックが最後に問う「私の感情はいま何色なんでしょうね」という一言に、物語の深層が凝縮されている。
読者に“解釈する余地”を大きく残したまま戦いが終わるため、アクションで魅せる巻でありながら、精神の物語としても味わい深い。
まとめ
第7巻は、派手なバトルの裏に隠れた心理と心情がとにかく濃い巻でした。
ジャックの勝利は衝撃的でありながら、ヘラクレスの信念や愛が最後まで揺らがない姿にも心を揺さぶられるはず。
読み終えたあと、「この戦いは何だったのか?」と改めて咀嚼したくなる余韻が残ります。
勝負は終わり、第8巻からは新たな戦いへ。
次に誰が登場するのか、そしてどのような“物語性の衝突”が描かれるのか――期待が高まる締めとなっています。


