ついに始まった11回戦、人類史上最強のスナイパー・シモ・ヘイヘと、神界最強のトリックスター・ロキの対決。
雪降るフィンランドの森という特殊な舞台で描かれるのは、単なる能力バトルではなく、「心の痛み」を背負った者同士の戦いだった。
チート級能力の応酬、そして両者の過去が明かされることで、勝敗以上に「どちらにも負けてほしくない」という感情が強く残る一冊である。
25巻の収録話と内容紹介
25巻は第99話~第103話を収録。
第99話
シモ・ヘイヘVSロキが開戦。
戦場は雪が降り続くフィンランドの森。外界と遮断された神の力によるフィールドで、刻一刻と天候すら変化する特殊な舞台だ。
このフィールドを希望したのは意外にもロキ。神界最強のトリックスターとしての余裕すら感じさせる登場となる。
第100話
ロキの能力が本格的に明かされる。
「道化師の環」による万物複製、そして神器「増殖する指輪」による無限増殖。トール、オーディン、ヘラクレスすら複製し、大軍でシモ・ヘイヘを追い詰める。
しかし、その大軍はたった一発の銃声によって壊滅する。
第101話
その一発の正体が謎として提示される。
釈迦とブリュンヒルデの会話から、シモ・ヘイヘの弾丸が常識外の存在であることが示唆され、やがて明かされる真実は、あまりにも重い代償だった。
第102話
シモ・ヘイヘの過去が描かれる。
白い死神と恐れられた英雄の裏にあった、眠れぬ夜と心の傷。彼がなぜ“臓器を代償にする弾”を撃てるのか、その理由が語られる。
第103話
ロキの過去へ。
狡猾さでも悪意でもなく、ただ一人の女性の笑顔を求めた結果が、トリックスター・ロキを生み出したことが明らかになる。
そして、額を撃ち抜かれたロキ。――まだ闘いは続く。
登場人物の動き・印象
寡黙なスナイパーという印象から、「心の優しさ」を強く感じさせる人物像へと変化。
人を撃つ痛みを誰よりも理解しているからこそ、自らを傷つける弾丸を選ぶという在り方が胸に刺さる。
これまでの狡猾で腹黒い神というイメージが大きく更新された巻。
その行動原理は驚くほど純粋で、どこか不器用な“思春期男子”のようにも見えてくる。
25巻の見どころ・印象に残った展開
能力のインフレ合戦に見えて、その実、描かれているのは心の奥底。
25巻は、バトルの派手さと心理描写の深さが高次元で融合した一冊だ。
雪原を支配するロキの複製能力
触れたものを無限に複製できる「道化師の環」は、まさにチート級。
しかも力を“分散できる”という性質を利用したロキの戦術は、ロキらしい狡猾さを感じさせる。
たった一発で覆る戦況
数で圧倒するロキに対し、シモ・ヘイヘは一発の銃弾でほぼ全滅させる。
量と質、神と人――そのすべてを否定するような展開が圧巻だった。
臓器を代償にする弾丸の真実
弾丸の正体が自らの臓器であると明かされた瞬間、物語の温度が一段階下がる。
それは力の代償ではなく、贖罪としての痛みだったという解釈があまりにも切ない。
ロキの過去がもたらす印象の反転
ブリュンヒルデの笑顔を見たい――それだけの理由で世界を引っ掻き回してきたロキ。
悪戯の裏にあった動機を知ったことで、彼を見る目は確実に変わる。
25巻全体のテーマ・考察
25巻のテーマは「優しさゆえの歪み」だと感じた。
シモ・ヘイヘは優しすぎるがゆえに自らを罰し続け、ロキは優しさを向ける先を間違え続けた。
どちらも悪ではないからこそ、この戦いはあまりにも残酷だ。
勝者が生き残り、敗者が消滅するという展開が、これほどまでに冷たく感じられる巻も珍しい。
まとめ
派手な能力バトルの裏で、ここまで感情を揺さぶってくるとは思わなかった25巻。
読み終えたあとに残るのは、興奮よりもむしろ静かな痛みだ。
ロキは本体をまだ見せていない。
シモ・ヘイヘは、次に何を代償に撃つのか。
優しい者同士の戦いが、どんな結末を迎えるのか――次巻が待ち遠しくてたまらない。


