【終末のワルキューレ15巻ネタバレ感想】始皇帝の過去とハデスの奥の手!死闘が激化するシーソーバトル

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ハデス有利かと思えば始皇帝が押し返し、始皇帝が優勢かと思えば今度はハデスが反撃――。

第15巻は、まさに終始“シーソーゲーム”のような展開が続く一冊だ。始皇帝の壮絶な過去と、ハデスの覚悟に満ちた奥の手が明かされ、単なる力比べでは終わらない、感情のぶつかり合いがより鮮明になっていく。

15巻の収録話と内容紹介

15巻は58話~61話を収録。

第58話

ハデスVS始皇帝の死闘が続行。ハデスの剛槍による猛攻に押される始皇帝だったが、実は“カウンターの一撃”を狙っていた。

口から吐き出した空気の塊を使い、ハデスの力の要を突くことで技の流れを乱すという離れ業に成功。ハデスはダメージを受けるが、なぜか始皇帝の腹にも同じような傷が――。
その仕組みは語られぬまま、戦いはさらに激化していく。

第59話

物語は始皇帝・嬴政(えいせい)の幼少期へ。
父・母・国すべてに捨てられた複雑な境遇の中、嬴政は“他人の傷や憎悪を自分の痛みとして感じてしまう”特異体質を持っていた。そのため常に笑顔を浮かべていたが、周囲からは不気味がられていた。

そんな彼の人生を変えたのが、世話役であり護衛でもあった春燕との出会い。
やがて王位継承をめぐり秦へ帰還する道中、春燕は命を落とす。「人の痛みが分かる王なら、この世の中は変えられる」――その言葉が、始皇帝の生き様を決定づけていく。

第60話

春燕の想いを背負った始皇帝は、精神を削り、己の身を犠牲にしながらハデスと互角以上に渡り合う。
スピード、パワー、戦闘経験ではハデスが上回るものの、覚悟の質が戦況を覆していく。

一方でハデスも敗北を許されない立場。バイデントを風車のように回転させ、空気弾を迎撃し始める。
それでもすべてを防ぐことはできず、始皇帝は「人でありながらここまで至った存在」として、ハデスに称えられる。

第61話

ベルゼブブとアダマスの会話から、ハデスが“ギリシャ四兄弟の長兄”である重圧と誇りが語られる。
そしてハデスは、自らの体にバイデントを突き刺し、大量出血。これは空気弾を察知するため、全身を血に染めるという狂気の戦術だった。

さらに血を吸ったバイデントは“宿命の四血槍”へと進化。始皇帝は受け流しきれず、正面から攻撃を受ける。
「最高の王になる」という春燕との約束を背負う始皇帝と、「長兄として負けられない」ハデス――因縁の戦いは次巻へと持ち越される。

登場人物の動き・印象

始皇帝

空気弾という戦術を駆使し、神すら翻弄する領域に踏み込む。一方で、過去編によって“人の痛みを知るがゆえに王になった”という人物像がはっきり描かれ、単なる戦士ではなく、背負う思想の重さが際立つ存在となった。

ハデス

終始圧倒的な実力を見せつつ、ついに自ら血を流すという極限の覚悟に到達。兄として、神として、負けられない理由がより重く描かれる巻となった。

15巻の見どころ・印象に残った展開

15巻の見どころは、戦術の読み合いと、両者の“覚悟”が正面から衝突する瞬間にある。始皇帝の過去、ハデスの奥の手――どちらも戦いの重みを一段引き上げる要素となっている。

空気弾という異色の戦闘術

口から吐き出す空気の塊で神の力の“要”を突くという、あまりにトリッキーな戦法。
理屈としては複雑だが、「呼吸」という人間の根源的な行為を武器にまで昇華させているのが面白いポイントだ。

小次郎が解説することで“気の流れ”という概念がより具体的になり、読者の理解も追いつく構成になっている。
息だけでハデスの剛力を鈍らせ、体勢を崩し、一撃を叩き込む始皇帝は、武術家というより“王”としての威圧感すら漂わせていた。

始皇帝の壮絶すぎる過去

嬴政の過去編は、この巻最大級の衝撃と言っていい。
“他人の痛みがそのまま自分の痛みになる”という体質は、武器を持つ以前に日常生活すら困難にする呪いにも近いもので、読者にも本能的な恐怖と哀しみを与える。
それでも彼は笑っていた――その笑顔が強さではなく“痛みに耐えるための仮面”だったという真実が胸に刺さる

春燕との出会いによって、初めて痛みから解放され、自分の居場所を得た嬴政。
だからこそ、春燕の「あなたなら世界を変えられる」という最期の言葉は、始皇帝のすべての原点になる。
戦場での強さと王としての矜持が一本につながる、非常にエモーショナルな回想だ。

ハデスの四血槍への覚醒

自らの武器を体に突き刺し、血で全身を染め上げる――という、常識を超えた戦術は見た目のインパクトも含めて圧巻。
「痛みを避ける」のではなく「痛みを選ぶ」覚悟の強さは、始皇帝の精神力に対するハデス側の“回答”のようにも見える。

血によって空気弾の動きを察知し、さらにバイデントが“宿命の四血槍”へ進化する演出は、神話的スケールの大技解禁を予感させる盛り上がり。
始皇帝の受け流しすら突破する破壊力は、ハデスがついに“長兄としての威厳”を全開にし始めた瞬間と言える。

15巻全体のテーマ・考察

第15巻のテーマは、「背負うものの重さ」と「覚悟の質」にあるように感じる。
始皇帝は人の痛みを背負い、ハデスは神の長兄としての誇りと責任を背負っている。どちらも“絶対に負けられない理由”を持った者同士の戦いだからこそ、この勝負は単なる勝ち負けでは終わらない。

個人的には、始皇帝が目隠しを外した判断についても考えさせられた。
ハデスの傷を見ることで、自分にも同様の痛みが返ってくる体質を持つ始皇帝。それでも目隠しを取ったのは、空気弾を使うためには視界が必要だったのか、それとも覚悟の表れだったのか。
この選択一つ取っても、始皇帝の“王としての生き様”がにじみ出ているように感じる。

まとめ

第15巻は、派手な技の応酬だけでなく、始皇帝とハデス、それぞれの“生き方”と“覚悟”が深く描かれた一冊だった。
戦況は完全に拮抗し、どちらに勝敗が転ぶのかまったく読めない状態で次巻へ突入する。

「最高の王になる」という約束を背負う始皇帝と、「長兄として負けられない」ハデス。
次巻では、いよいよこの覚悟同士が決着を迎えるのか――。決戦の行方から、ますます目が離せない。