第5巻ではついに「佐々木小次郎 vs ポセイドン」の激闘が決着。さらに第4回戦として“英雄ヘラクレス”と“人類史上最悪の殺人鬼ジャック・ザ・リッパー”が登場し、新章が幕を開ける。人類が神に挑む意味、価値観の衝突、そして「悪意」をめぐる駆け引きなど、シリーズの核心に迫る一冊。
5巻の収録話と内容紹介
5巻は19~21話を収録。
第19話:小次郎、二刀の神器で覚醒
折られた物干し竿はワルキューレ・フリストの特性により“二刀の神器”として復活。
小次郎の戦闘能力は一段と深化する。
ポセイドンの千手無双をも超える圧倒的な攻撃を前に一度は心が折れそうになるものの、これまで敗れてきた強者たちの“声”が小次郎を奮い立たせる。
空気の揺らぎ、地の振動など森羅万象を読む「萬手無双」に到達し、ついにポセイドンの右腕・左腕を切断。
最期は口にくわえた武器ごとポセイドンを斬り伏せ、小次郎が人類側に初の勝利をもたらす。
第20話:神の沈黙とヘラクレス登場
神が人に負けるという前代未聞の事態に、神々はただ沈黙。
ブリュンヒルデとゲルは「二連敗だけは絶対に避けたいはず」と語り、次なる神側の出場者が注目される。
そこへ現れたのがヘラクレス。
ブリュンヒルデは既に対戦相手を決めており、それが“連続殺人鬼ジャック・ザ・リッパー”。
舞台はジャックの要望で19世紀ロンドンへ。
こうして正義の英雄と、悪意の象徴の戦いが幕を開ける。
第21話:ジャックの罠と「神器創出の袋」
ヘラクレスはジャックを「人類代表にふさわしくない」と激怒し、降伏を勧告。
しかしジャックは「決闘を受けるのが紳士」と退かない。
大バサミを神器と言い張るジャックだが、それは囮。
実際の神器は“創出の袋”で、あらゆる凶器を生み出せるというトリッキーさ。
ロンドンの街には無数の罠が張り巡らされ、ヘラクレスはそれをものともせず追うが、ジャックのナイフがついに彼の肉体に傷をつける。
人器が神に通じないはずの世界で、ジャックの攻撃が成立した理由とは――。
戦いはただの力比べではなく、「悪意」という概念そのものを巡る勝負へと移っていく。
登場人物の動き・印象
敗北の蓄積と勝ちたいという思いを力へと変える“萬手無双”へ覚醒。神を初めて倒した人類代表として、物語上の存在感が一気に増す。
フリストの特性を忘れていたのか、小次郎の二刀化に思わず素の喜びを見せるなど、感情面が少し深掘りされる。
これまでの人類代表と真逆の“悪意の具現”。表面は紳士的だが、大バサミのフェイク、突然のティータイムなど何をしてくるか分からない戦闘スタイル。
感情を排した“絶対神”の象徴として描かれてきたが、散る間際の最期の捨て台詞まで終始一貫していた。まさに孤高の神。
正義・誠実・武人としての矜持が強く、敵をも敬う姿勢が印象的。もはや人類側でいいじゃんと思えるような神。
5巻の見どころ・注目ポイント
第5巻は、単なるバトルの決着を越えて、「人類が神に勝つ」とはどういうことなのか――その意味が強烈に突きつけられる巻。さらに第4回戦の組み合わせがこれまでにない“価値観の衝突”として提示される。
小次郎、敗北の記憶による“萬手無双”への覚醒
折れた物干し竿が二刀の神器へ進化し、過去の強者すべての動きを集約した“剣士の集大成”へ。
空気の揺れ、地面の振動まで読む「萬手無双」が誕生。
どれだけ強力な個でも集団には劣る。まるでポセイドンの価値観を全否定するような勝ち方が印象的でした。
ポセイドン戦の決着と神々の沈黙
ポセイドンの右腕を切断。絶対的な自信を持つ者ならこの事実に放心状態になりそうなものだが、ポセイドンは当然の如く左腕で攻撃。それも切断されて口で攻撃。
最期の散り際も「この雑魚が・・・」と神が人間なんかに劣るわけがないという姿勢を崩さなかった。この考えを貫き通すところがポセイドンらしい。
また観客も、この歴史的異常事態に沈黙で応えたという表現が、より凄さを強調していように思えます。
ヘラクレスという“正義”と、ジャック・ザ・リッパーという“悪意”
武人としての誠実さを持つヘラクレス。
対するはブリュンヒルデが「クソ中のクソ」と評するジャック。
正義と悪意、圧倒的な価値観の衝突が物語を動かす。
これまでの人類側が正義、神側が悪というイメージの逆パターンで新鮮。
5巻全体のテーマ・考察
第5巻は、これまでの「力 vs 力」の構図から一歩踏み込み、“人類とは何か”“強さとは何か”というテーマが深く描かれた巻だといえる。
小次郎の勝利は、天賦の才を持つ者が神に挑んだのではなく、敗北を積み重ねた人間が、その経験の総体で神を超えたという点に最大の意義がある。
ひとりの剣士としての才能ではなく、これまで戦い続けた幾人もの強者たちの技、観察、蓄積――つまり人類の歴史そのものが結実した戦いだった。豪傑一人ではなく、数多の敗北が作り上げた強さが神を討ったという構図は、この巻の中心テーマに思える。
一方で新たに始まるヘラクレス対ジャック戦は、小次郎戦とは正反対の方向で“人間性”を描く。
ヘラクレスは神でありながら人間を愛し、正義や誠実を重んじる存在。対してジャック・ザ・リッパーは人類史でも突出した悪意を持つ男であり、人類代表としてこれ以上ないほどの“負”の象徴だ。
ブリュンヒルデがこのカードを組んだ理由も、「人間が神に勝っている唯一の点は悪意である」という認識を示しており、小次郎戦の“積み重ねによる強さ”とはまったく異なる、人類の暗部を武器にする戦いへと舵が切られていく。
まとめ
第5巻はシリーズでも屈指の名勝負の決着と、新たな価値観の戦いの幕開けが描かれ、人類側の多様性と“強さの在り方”が深く掘り下げられる巻。
次巻への期待が一気に高まりました。


