激闘・釈迦VS波旬の決着、その余韻がまだ冷めやらぬ中で、物語は新たな局面へ。
第14巻では、裏切りによってメンバー補充する神々、人類側の“切り札”の存在、そしてまさかの冥界王ハデス参戦と、“王VS王”という最高に熱いカードが切られる。
さらに、ブリュンヒルデの真意や、オーディンとベルゼブブの不穏な会話など、単なる人類存亡バトルでは終わらない空気が強くなってきた一冊だ。
14巻の収録話と内容紹介
14巻は54話~57話を収録。
第54話
波旬を打ち破ったものの、満身創痍の釈迦は医務室へ搬送される。運ばれる最中、ブリュンヒルデとの何気ないようで意味深な会話が交わされ、「人類存続」だけではない彼女の“別の目的”を匂わせるやり取りが印象的だ。
その直後、オーディンとベルゼブブの会話も描かれ、波旬誕生の裏にベルゼブブの関与があった可能性、そしてオーディンの“宿願”という新たな謎が浮上する。
さらに神側は釈迦の離脱により人数が不足。次戦に名乗りを上げたのは、冥界の王・ハデスだった。
第55話
ブリュンヒルデとゲルの前に現れたのは、人類史上最悪にして最強の預言者・ノストラダムス。
天界と冥界をつなぐ“ビフレスト”を破壊した唯一の人類という規格外の存在で、ブリュンヒルデからは「我々のジョーカー」と評される。
そして次戦の相手がハデスであることが人類側にも伝えられ、“王には王を”として選ばれたのが始皇帝だった。
第56話
第7回戦、ハデスVS始皇帝がついに開幕。
中華歴代皇帝たちが道を切り開くという異常な入場演出とともに、“朕の進む先、それすなわち道なり”という圧倒的王の存在感を見せつける始皇帝。
ハデスも弟ポセイドンのトライデントを自身の武器に融合し、両者万全の構えで激突。一撃必殺級の刺突と受け流しの応酬が始まる。
第57話
始皇帝の過去――中華の“王”を認める存在・蚩尤(しゆう)との戦いが語られる。
蚩尤を倒すことで「過去の王の時代」を終わらせ、人の手に歴史を取り戻した始皇帝。その時に編み出した技が、現在のハデス戦でも炸裂する。
一方で、ハデスも王としての誇りを見せ、受け流しを無効化する強引な一撃で反撃。
始皇帝はついに目隠しを外し、「続きをしようか」と告げたところで第14巻は幕を閉じる。
登場人物の動き・印象
勝利の代償としてボロボロの状態に。だが精神的にはブリュンヒルデを気遣う余裕すら見せる。完全に“神でも人でもない立場”に立った存在としての格が際立つ。
人類存続だけを目的としていないことが強く示唆される巻。ノストラダムスを「ジョーカー」と呼ぶ点からも、ラグナロクの先を見据えている可能性が濃厚に。
登場からして異質の存在感。まだ戦わないのに“重要人物”であることだけははっきりわかる立ち位置。
圧倒的“王”のカリスマを持つキャラクターとして描かれ、過去と現在がリンクすることで説得力が一気に跳ね上がる。
弟ポセイドンの仇討ちを背負った冥界王。冷静沈着でありながら、その内には強烈な王の矜持を秘めている。
14巻の見どころ・印象に残った展開
第14巻は、バトルそのもの以上に「裏に潜む思惑」と「王という存在の重み」が強く印象に残る一冊だ。釈迦戦の余韻、不穏な会話、そして王VS王の開幕――どこを切り取っても次元の違う緊張感が漂っている。
釈迦とブリュンヒルデの意味深な会話
人類存続という“大義”の裏に、ブリュンヒルデ個人の“煩悩”や別目的があるのではないかと感じさせるシーン。
これまで当たり前だと思っていたラグナロクの構図が、ここで一気に揺らぎ始める。
ノストラダムスという“ジョーカー”の投入
冥界に堕とされた唯一の人類、ビフレスト破壊という規格外の実績。
てっきりハデスと闘うから登場したと思ったが、出番はまだ先らしい。
ここで戦わないからこそ、「この男は何を起こすのか」という不気味な期待感だけが強烈に残る。
王VS王・ハデスVS始皇帝の幕開け
「王には王を」というシンプルで最高に燃える構図。
復讐を背負う冥界王と、歴史そのものを変えた始まりの王。肩書きだけでもワクワクが止まらない戦いが、ついに本格始動する。
14巻全体のテーマ・考察
第14巻を読んで感じるのは、「この戦いは本当に“人類存亡だけ”が目的なのか?」という強烈な違和感だ。
ブリュンヒルデの含みのある言動、ベルゼブブとオーディンの会話、ノストラダムスという例外的存在――すべてが、“ラグナロクという舞台そのものに裏の目的がある”と示唆しているように見える。
単なる神VS人の代理戦争ではなく、
誰かがこの戦いを利用して、もっと大きな何かを動かそうとしている
そんな構図が、いよいよ輪郭を帯び始めた巻だと感じた。
まとめ
釈迦VS波旬の激闘を締めくくりつつ、物語の“裏側”を一気に押し広げた第14巻。
王VS王という最高のカードを切りながら、さらにその裏で動く者たちの気配まで濃くなってきたのが本巻最大の魅力だ。
始皇帝が目隠しを外し、本気の戦いへと入ったことで、次巻はいよいよハデス戦が本格化するはず。
同時に、ブリュンヒルデ、ノストラダムス、オーディンたちの思惑も、少しずつ明らかになっていくのではないか――そんな期待を抱かせる、非常に“仕込みの効いた一冊”だった。



