終末のワルキューレ第9巻レビュー|雷電VSシヴァ激闘と、頂点に立つ神の“孤独”

熱くなれるバトル&冒険系
本記事はプロモーションを含みます

表舞台では雷電為右衛門とシヴァの死闘が極限まで加速し、舞台裏では釈迦とロキの遺恨が静かに火種を残す――。


第9巻は、「神と人の頂点」を巡る戦いの裏に潜む感情と因縁が、より深く掘り下げられる一巻だ。とくにシヴァの過去と、親友ルドラとの哀しい戦いは、バトル漫画の枠を超えた切なさを残してくる。

『終ワル』巻ごとレビュー一覧

第1巻|▶第2巻|▶第3巻|▶第4巻|▶第5巻|▶第6巻|▶第7巻|▶第8巻|▶第9巻(この記事)|▶第10巻|▶第11巻|▶第12巻|▶第13巻|▶第14巻|▶第15巻|▶第16巻|▶第17巻|▶第18巻|▶第19巻|▶第20巻|▶第21巻|▶第22巻|▶第23巻|▶第24巻|▶第25巻|▶第26巻|▶全巻まとめ

9巻の収録話と内容紹介

9巻は34話~37話を収録。

第34話

釈迦、小次郎、沖田、近藤VSロキ、七福神という異様な組み合わせの裏バトルがついに勃発――と思いきや、そこにゼウスとオーディンが介入。
戦いは強制的に止められ、全面衝突は回避される。しかし、釈迦とロキの間には決定的な遺恨だけが残った。
そして舞台は再び、第5回戦・シヴァVS雷電為右衛門へと戻る。ちょうど雷電が、シヴァの四本ある腕の一本を粉砕した直後だった。

第35話

途中から観戦したゼウスに、ヘルメスが状況を説明。雷電が「百%の筋肉」を解放し、怒涛の打撃ラッシュを叩き込んでいたことが描写される。
雷電の技・菊一文字によってシヴァは一度ダウンするが、ふらつきながらも立ち上がる。


その後は一転して、四本の腕を活かしたシヴァの猛ラッシュ。全てが大砲のような重打撃の応酬の末、雷電がシヴァの腕を掴み、ついに握りつぶす。
両陣営の観客席も、人類・神ともに最高潮の熱狂に包まれる。

第36話

シヴァの拳には「1116柱」の神々の想いが宿っていることが明かされ、その重さに雷電も必死に食らいつく。
そんな激闘の最中、シヴァは「数千年ぶりにこんなに熱くなった」と語り、過去へと物語は遡る。


まだ下級神だった頃のシヴァと、親友ルドラの若き日々。喧嘩に明け暮れながらも、いつしかインド神界の頂点を目指す二柱の物語が語られ始める。

第37話

多くの神々から嘲笑されながらも、ただひたすら前に進み、ついに1115柱を倒して頂点に辿り着いたシヴァとルドラ。
だが「頂点に立つ神は一柱でいい」と、ルドラは親友との決戦を選ぶ。


激戦の末、勝ったのはシヴァ。しかし何度も立ち上がるルドラを前に、シヴァは降参を考えるほど追い詰められる。
最終的にルドラの方が折れ、敗北を受け入れることでシヴァは頂点に立つ――代償は、親友の消失だった。
現代に戻ると、姿を消したはずのルドラは、観客席で静かに戦いを見守っていた。

登場人物の動き・印象

雷電為右衛門

超筋外骨締廻により生まれて初めて全力を解放。力士としての誇りと純粋すぎる闘争心が、観客席全体を巻き込む存在感を放っている。

シヴァ

ただの陽気な破壊神ではなく、「頂点に立つ孤独」と「親友を失った過去」を背負う存在として描かれるようになる。戦う理由の重みが、この巻で一気に深まった。

ルドラ

シヴァの人生を決定づけた最重要人物として強烈な印象を残すが、姿を消していた。雷電との戦いはしっかり観戦中。

釈迦

 裏切り者としての立場が、ゼウスとオーディンに黙認されているようにも見える不気味さが強まる。泳がされている存在なのか、それとも想定外なのか、謎が深まる。

ロキ

 釈迦への敵意が明確化。裏バトルが未遂に終わったことで、むしろ憎悪だけが純度を増した印象。

9巻の見どころ・印象に残った展開

第9巻の見どころは、大きく分けて「未遂に終わった裏バトル」と、「神の頂点に立つまでの哀しい過去」。
表と裏、現在と過去、その両方で因縁が静かに積み重なっていく構成が印象的だ。

釈迦VSロキが“起きなかった”意味

ついに全面衝突かと思われたところで、ゼウスとオーディンが介入。戦いは止められるが、遺恨だけが強固に残る展開に。
何も触れずに解散させた二人の神の意図が、不気味な余韻として残る。

雷電とシヴァの、純粋すぎる力のぶつかり合い

百%雷電のラッシュ、菊一文字、そしてシヴァの四本腕の猛打――力と力だけで殴り合う、非常に“原始的”で美しいバトルが続く。
この巻では、両者ともに限界を超え始める瞬間が強く描かれる。

シヴァとルドラ、頂点に立つための別れ

1116柱の頂点に立つまでの物語は、本巻最大の感情パート。
勝ったのに何も得られなかったような、そんな虚しさが残る「哀しい勝利」が胸に刺さる。

9巻全体のテーマ考察

第9巻のテーマは、「頂点に立つということの代償」と「仕組まれた戦いの違和感」だと感じた。

シヴァは頂点に立った代わりに、親友を失った。
神々の頂点に立つとは、栄光ではなく“孤独”を背負うことなのだと、この回想は強く訴えてくる。

一方で、釈迦の裏切りに対してゼウスやオーディンが全く咎めなかった点も引っかかる。
気付いていないとは考えにくく、むしろゼウスは人類側に「神の領域」に踏み込ませ、その戦いそのものを楽しんでいるようにも見えた。

またオーディンは、釈迦の言動に怒るというよりも昂っているように感じた。

まとめ

第9巻は、雷電VSシヴァの肉体バトルの激化と、シヴァの過去という精神ドラマが強く印象に残る一冊だった。
とくにルドラとの別れは、勝者がすべてを失うという、残酷な神話的運命を感じさせる名エピソード。

また、釈迦とロキの裏バトル未遂、ゼウスとオーディンの不可解な対応など、物語全体の“裏の流れ”も確実に動き始めている。

次巻では、雷電とシヴァの決着がいよいよ見えてくるはず。
そして、裏で静かに積み上がった因縁が、どこで爆発するのか――期待が高まる巻だった。

『終ワル』巻ごとレビュー一覧

第1巻|▶第2巻|▶第3巻|▶第4巻|▶第5巻|▶第6巻|▶第7巻|▶第8巻|▶第9巻(この記事)|▶第10巻|▶第11巻|▶第12巻|▶第13巻|▶第14巻|▶第15巻|▶第16巻|▶第17巻|▶第18巻|▶第19巻|▶第20巻|▶第21巻|▶第22巻|▶第23巻|▶第24巻|▶第25巻|▶第26巻|▶全巻まとめ